冬になるとお手洗いが近くなり、夜中に目覚めてしまう方もいるのではないでしょうか?冬場のお手洗い覚醒(夜間頻尿)には、気を付けた方がよいリスクもあります。
今回は冬のお手洗い覚醒(夜間頻尿)について考えます。
年齢とともに増えるお手洗い覚醒(夜間頻尿)
国際的な排尿に関する学会では、眠っているあいだに排尿のために1回以上起きなければならない状態を、「夜間頻尿」と定義しています。
しかし、睡眠の面から見ると、一晩に2~3回以上トイレのために目が覚めてしまう場合に、問題となることが多いようです。
夜間頻尿は、年齢とともに多くなります。
40歳代では男女とも1割ほどの人にしか起こりませんが、60歳代では男性の約4割、女性の約3割、80歳以上では男性の8割以上、女性の7割以上に起こります。
夜間頻尿は、睡眠を細切れにして睡眠の質を悪くします。高齢者の場合は、トイレへ行く途中に足元がふらついて、転んで骨折するリスクがあることが大きな問題です。
また、睡眠不足のため日中の眠気が強くなり、仕事や家事の能率を落ちてミスや事故が増えます。
どうして冬はお手洗いが近くなるの?夜間頻尿のメカニズム
夜間頻尿の主な原因は、夜間に尿が多く作られ過ぎること(夜間多尿)や膀胱が十分大きくならないこと、そしてよく眠れないことなどです。
健康な人では眠っているあいだは、あまり尿が作られません。ところが何か問題があると、睡眠中でも日中と同じかそれ以上に尿を作ってしまします。
夜に尿の量が増える原因は、眠る前に水分を摂り過ぎることやアルコールを飲むこと、糖尿病や高血圧症、うっ血性心不全、腎機能障害などの内科の病気、眠っているあいだに呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」などがあります。
眠っているあいだは尿をたくさんためられるように、膀胱の容量が大きくなります。
ところが、加齢やアルコールの摂取、膀胱が過敏になる「過活動膀胱」、年配の男性がかかりやすい「前立腺肥大症」などがあると、膀胱が大きくなれないため短い時間でトイレに行きたくなります。
また、寒くなると身体の筋肉がこわばります。膀胱の筋肉も同じで、他の季節に比べて冬には膀胱の筋肉が固くなって、尿をためにくくなります。
トイレに行きたくて目覚めるという人でも、実は目覚めるからトイレに行きたくなることもあります。眠りが浅くてグッスリ眠れないと、目覚めたときに尿が気になってしまうのです。
冬は寒くて、夜中に目覚める回数が増えがちです。そうなると、お手洗い覚醒(夜間頻尿)が起こりやすくなります。
お手洗い覚醒(夜間頻尿)のリスク
夜中に目覚めた直後は頭がボーッとしていて、トイレへ行くまでに転ぶことがあります。高齢者の場合は、転ぶと骨折するリスクが高まります。
特に、股関節や背骨を骨折すると寿命が縮んでしまうので、注意が必要です。毎晩のように夜間頻尿がある人は、寝室の豆電球をつけたままで眠るか、目覚めたときにリモコンで部屋の照明をつけるなどしてください。
温かい寝床の中から急に寒いところへ出ると、気温の変化で血管が縮んで、脳梗塞や心筋梗塞が起こりやすくなります。特に高齢者の方は、寒い寝室で眠りがちです。
できれば、冬でも寝室は15度以上にしておきましょう。廊下やトイレもある程度、暖かくしておくことをお勧めします。
夜の睡眠がこま切れになると睡眠の質が悪くなり、日中の活動に悪影響が出やすくなります。
夜間頻尿のあとにすぐに眠れるのであれば、あまり大きな問題ではありませが、トイレに行ったことが刺激になって、なかなか寝付けないこともあります。
そのような状態が続くと、やがて不眠症になることがあるので注意が必要です。
冬のお手洗い覚醒(夜間頻尿)を減らすために、水分・運動・お尻体操
1.水分の見直し
脳梗塞や心筋梗塞の予防のために、眠る前に水分をたくさん摂る人がいます。
ところが、これには科学的な根拠はありません。夏に比べて冬には睡眠中にかく汗が減るので、眠る前の水分量を見直すとよいでしょう。
血圧が高い人は、毎日の塩分摂取量を減らすと血圧が下がるだけでなく、水分摂取量も減りやすいので一石二鳥です。
また、カフェインやアルコールは、尿の量を増やします。眠る前の3時間は、カフェインやアルコールを控えましょう。
2.生活習慣の見直し
生活習慣の見直しも大切です。就寝時刻や起床時刻、食事の時間などがバラバラだと、お手洗い覚醒(夜間頻尿)が起きやすくなります。
睡眠や食事のパターンを決めて、なるべく毎日の生活を規則正しくすると、夜中に目覚めにくくなります。
3.運動
夕方から夜にかけて散歩などの軽い運動をすると、眠る前に身体の中から水分が尿や汗として抜けるので、夜間頻尿が減ります。
運動の目安は1 日 20 分ほどですが、まずは自分ができる範囲で始めるのが現実的です。
また、夕方以降に足がむくむ人は、弾性ストッキングをはくと夜間頻尿が減ることもあります。
4.眠りやすい寝室
眠るときは、寝室や寝床をなるべく暖かくしましょう。寝床を温めるためには、湯たんぽがお勧めです。電気毛布と違って睡眠中の自然な体温低下を妨げないので、グッスリ眠れます。
5.お尻体操
寝床の中では「お尻体操」を行いましょう。5秒間お尻の穴をしめたあと、5秒間ゆるめます。これを20回ほど行うと骨盤の中の血流が良くなって、膀胱の筋肉が柔らかくなります。
自分でできることをやってもお手洗い覚醒(夜間頻尿)が減らないときは、医師に相談してください。
糖尿病や高血圧症、うっ血性心不全、腎機能障害などがあれば内科の医師に、睡眠時無呼吸症候群の場合は耳鼻咽喉科や睡眠障害の医師を受診しましょう。
photo:Thinkstock / Getty Images