女性の身体とは切り離せない生理(月経)。周期の乱れや体調不良、痛みに悩まされるなど、生理に対してネガティブなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
そこで、生理の仕組みやトラブルに直面したときの対処法、妊娠しているかどうかの判断材料、眠気との関係性などについてまとめてみました。
正常な生理ってどんなもの?

ある製薬会社の調査によると、生理が始まる年齢から閉経までの期間はおよそ35年~40年間。毎月5日間を生理期間と考えた場合、一生のうち6年半以上も生理と付き合うことになります。生理時期を快適に過ごすためにも、まずは生理の基礎知識を覚えておきましょう。
生理の仕組み
生理とは、子宮の内側にある子宮内膜の表面がはがれ落ち、血液と一緒に体外に排出されることによって起こります。はがれ落ちた子宮内膜は翌月に向けて内膜を厚くしていき、またはがれ落ちるという流れが繰り返されるため、周期的に生理が訪れます。
生理周期とは
生理が始まった日から次の生理が始まる前日までを、生理周期(月経周期)と呼びます。一般的に生理期間は平均3~7日間、生理周期は25~38日とされています。生理周期が平均よりも長かったり、短かったりする場合は、何かしらのトラブルが起きている可能性も。
ただし、思春期は生理のリズムが安定していないため、周期が乱れることもあります。主に成人女性の生理周期トラブルに多いのが、以下の2つ。
頻発月経
生理周期が24日以内で起こる短い生理を頻発月経と呼びます。生理のときに排卵が起きない無排卵性月経であることが多く、その影響で周期が早まります。1カ月に2回など、頻繁に月経がきて貧血を起こすこともあり、多くはストレスや過度なダイエットが原因とされています。
稀発月経
生理周期が39日以上も空いてしまう長い周期の生理を稀発月経と呼びます。こちらも急激な体重の増減や過度のストレスによって誘発され、無排卵性月経や卵巣の働きが不十分で、ホルモンの分泌が順調でないことが原因の一つとされています。
正常な経血の量は?
生理のときに排出される血液を「経血」と呼び、一般的には1回の生理期間で20~140mlくらいの量が出るそう。自分の経血量を把握するのは難しいですが、以下のようなイレギュラーな経血でなければ、問題なしと考えてよいようです。
月経過多(経血が多すぎる)
量が140ml以上の場合。1時間でナプキンを交換しないと血液が漏れてしまうほどの量で、レバーのような血の塊が出ることも。子宮筋腫や子宮内膜症の疑いもあるので、早めに婦人科へ行って検査を受けましょう。
月経過少(経血が少なすぎる)
量が20ml以内、1~2日で終わる場合。ナプキンが必要ないほど経血量が少ないときは、無排卵性月経の可能性があります。やはり婦人科の受診を検討しましょう。
生理にまつわるトラブル

生理中は様々なトラブルが起こりやすいもの。なかでも、成人女性が悩みがちなトラブルの原因と対策をまとめました。
生理の遅れ
生理の遅れは身体からのサインと考えられ、原因としては以下の可能性が考えられます。
妊娠の可能性
規則正しい生理周期が急に乱れ、1週間以上も遅れている場合は妊娠の可能性が考えられます。生理不順の人でも、前回の生理から4週間、生理予定日から2週間以上経っても生理がこない場合は、妊娠の可能性を考えた方がよいかもしれません。
女性の身体は妊娠するとhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)というホルモンが分泌され、生理予定日の頃から尿の中に含まれるようになります。尿の中にhCGが含まれていれば、市販の妊娠検査薬で陽性反応が出るため、妊娠しているかどうかを確かめることができます。
ストレス
ストレスは女性ホルモンのバランスを崩してしまいます。女性ホルモンはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があり、これらの分泌バランスが崩れると排卵が遅れ、生理も遅れてしまいます。
特に過度な体重の増減や睡眠不足、激しい運動などはストレスにつながりやすいために注意が必要です。
薬の副作用
医師から処方される薬や、市販の薬の中には、副作用として月経不順になるものがあります。説明書、または医師や薬剤師に確認しましょう。
病気
3カ月以上も生理がこない場合は、無月経という病気かもしれません。卵巣の機能異常やホルモン異常といった病気が潜んでいる可能性もあるので、早めに婦人科を受診しましょう。
生理周期が乱れたときの対処法

生理周期が乱れたときは、心身のケアをこころがけましょう。例えば以下のような方法があります。
漢方薬を飲む
自然由来の材料でできている漢方は、身体への負担が少ないのが特徴。生理不順には、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)という漢方が効果的とされています。ただし、漢方は体質によって処方されるものが変わることもあるので、病院や漢方薬局で相談してから使用しましょう。
ツボを刺激する
生理不順や生理痛など女性特有の症状を改善・緩和するには、ツボを刺激するのも効果的です。
生理不順に効果的なツボ
- 関元(かんげん)
腰痛、下腹部痛、身体の冷えなどに効き目があり、生理痛、生理不順、子宮筋腫の予防にも効果的とされています。
位置:指幅4本をそろえて人さし指をおへそに置き、小指があたるところ。 - 合谷(ごうこく)
生理不順だけでなく、手足の冷え、肩凝り、ストレスなどにも効果があるという万能のツボです。
位置:手の親指と人さし指の骨が交わったところから、やや人さし指寄りのへこんだ部分。
リラックスする
女性ホルモンのバランスが崩れたことによって自律神経と生理周期が乱れている場合、リラックス状態へと導く副交感神経を優位にすることがポイント。
副交感神経を優位にするためには、好きな香りをかぐ、40度以下のぬるめのお湯で15分以上じっくり入浴する、などが手軽でおすすめです。良質な睡眠にもつながるので、心身のストレス解消も期待できます。
生理痛の対処法

生理痛はなぜ起きる?
本来、正常な生理は痛みをほとんど感じませんが、女性の社会進出が進んだ現代では、仕事のストレスやライフスタイルの変化によって生理痛に悩む人が増えているようです。生理痛の原因として主に考えられるのは以下の3つ。
「プロスタグランジン」の分泌過多
プロスタグランジンとは、生理活動に影響を与えるホルモンの一種です。子宮を収縮させ、子宮内膜がはがれ落ちるときの血液を体外に排出させる働きをしています。
このホルモンには身体を痛みに反応しやすくするはたらきがあるため、多く分泌されてしまうと、生理痛の原因となるといわれています。
子宮が未発達
20代前半頃までの女性は子宮が未発達で小さく、生理に順応しきれていないことがあります。経血の出口である子宮口の周りは硬くて狭いため、経血を排出させるために上記のプロスタグランジンの分泌量が多くなりがち。
年齢を重ねて子宮が十分な大きさになれば、痛みは弱くなってくるといわれています。
身体の冷え
身体が冷えて血行が悪くなると酸素と栄養が不足し、子宮の機能が低下して経血をスムーズに排出できなくなるそう。
すると、身体は子宮をより収縮させて経血を出そうとするため、プロスタグランジンの分泌量が多くなり生理痛を感じやすくなるようです。
では、辛い生理痛を和らげるにはどうすればよいのでしょうか?
生理時の痛みを和らげるには?
痛みがひどいときは動くことすら難しい場合があります。事前に有効な対策をいくつか覚えておけば、落ち着いて対処できるはずです。
簡単なエクササイズ
生理痛を和らげるには、身体を動かして血行を良くすることが大切。手軽なのが、かかとの上げ下げです。1秒に1回のペースで上げ下げを繰り返しましょう。椅子に座っているときや歯磨きタイムなど、スキマ時間に行うことができます。
湯たんぽで加温
生理痛対策で重宝するのが湯たんぽ。身体が冷えたり、デスクワークなどで同じ姿勢が続いて血行が悪くなっているときは、湯たんぽを太ももの上に置いたり、仙骨(お尻の上あたりにある骨)に当てて温めると楽になります。
婦人科の受診
生理のたびに我慢できないほどの痛みが続く場合は、婦人科を受診して薬を処方してもらうのもひとつの手。医師が処方する薬は市販薬に比べて有効成分の量が多く、即効性が期待できるものもあります。
生理中の食事
生理中はいつもより身体が敏感になっているので、食事にも気を配ることが大切。ストレスを溜めないよう、好きなものを食べるのもよいですが、下記のような生理中に食べるべきもの、避けるべきものは頭に入れておきましょう。
生理中に積極的にとりたい食べ物
生理中は経血が排出されるため、栄養が不足しがち。そんなときは、血をつくるもととなる鉄分が豊富な食品や、身体を温める食事を取り入れましょう。
鉄分を多く含む食品
ひじき、レバー、マグロなど
身体を温める食品
にんじん・大根・ごぼうなどの根菜、ニンニク、ショウガなど
なるべく控えたい食べ物
生理中は身体を冷やすものや血行を悪くする食べ物は控えめに。特に、以下のものはご注意を。
チョコレートやケーキなどの甘いもの
精製された砂糖は身体を冷やすといわれています。リラックスタイムに少量をとるなら問題ありませんが、食べすぎには注意しましょう。
カフェインを含むコーヒーや紅茶
カフェインには血管収縮作用や利尿作用があり、身体を冷やしたり血の巡りを悪くしたりします。
生理前PMSと妊娠初期症状の違いとは?

妊娠初期症状とは、妊娠0週から妊娠14週までの妊娠初期にあらわれる身体的な諸症状のことで、早ければ妊娠4週頃(生理の遅れに気づく頃)から現れます。
具体的な症状としては、吐き気や眠気、熱っぽさを感じたり、イライラしやすくなったりする人が多いよう。
この妊娠初期症状と混同されやすいのが、生理の予定日が近づくと現れる「月経前症候群(PMS)」です。
生理前PMSと妊娠初期症状の見分け方
PMSはホルモンバランスの乱れによって症状が現れ、人によっては日常生活に支障をきたすほど重くなる場合もあるといわれています。
妊娠初期とPMSは症状が似ていますが、下記のような特徴があれば妊娠の可能性が考えられます。
妊娠初期の特徴
- 食べ物の好みが変わる
- 匂いに敏感になる
- 乳首の色が変わる
- 熱っぽい(3週間以上基礎体温が高い状態が続く)
妊娠したかも?と思ったら
妊娠したかもしれないと思ったら、市販の妊娠検査薬でチェックしましょう。検査薬はあまり早い時期に使うと正しく判定できないため、生理予定日から1週間~10日ほど経ってから使うのがベター。
検査薬で陽性が出た場合は妊娠している可能性がありますが、確定ではありません。子宮外妊娠など、正常な妊娠でない場合もあるので必ず婦人科を受診してください。
生理期間の睡眠トラブル対処法

生理中は夜なのに妙に目が冴えてしまったり、経血の漏れが心配で熟睡できなかったりと、睡眠不足になりがち。快適に過ごすにはどうしたらいいのでしょうか?
生理中に眠くなる理由
生理前や生理中に眠気を感じる人も多いはず。その主な原因は、生理時期に女性ホルモンのバランスが崩れるためです。女性ホルモンの一種であるプロゲステロンには、体温を上げ、眠気を催す効果があります。
人は体温が下がることで入眠しますが、プロゲステロンの分泌が多くなると夜になっても体温が下がらず、睡眠が浅く質の悪いものになってしまいます。そのため睡眠不足になり、昼間は眠気に襲われることに…。そんな場合は、効率的な仮眠で眠気を解消しましょう。
効率的な仮眠のとり方
できるだけ仮眠をとり、リフレッシュを心がけてください。仮眠時間は15分程度がおすすめです。
- 仮眠をとるのが難しい場合は…?
眠気はたまればたまるほど、解消するのに時間がかかります。どうしても仮眠をとるのが難しい場合は、1分間だけでも目を閉じてみましょう。詳しい方法は下記の記事をご覧ください。
【仕事中の眠気対策】1分仮眠法で仕事効率を上げるコツとは
./3098.html
就寝中に心配な経血のうっかり漏れを防ぐには
生理中は経血が漏れてしまわないか心配になり、なかなか熟睡できないということも。安眠するために便利な生理グッズを紹介します。
月経カップ(スクーンカップ)
シリコン素材で作られた、鈴のような形をしたカップ型の生理用品。タンポンと同じように膣の中に入れて使用します。カップの中に経血がたまるのでムレや経血の漏れは気にならず、ストレスフリーだそう。
最大12時間程度効果があるそうなので、睡眠時はもちろん、温泉旅行やスポーツも生理を気にせず楽しめます。
タンポンとナプキンの併用
寝返りを打ったり、長時間トイレへ行けなかったりと、睡眠中はナプキンだけでは心もとないということもあるはず。特に経血の量が多い日は、タンポンとナプキンの併用がおすすめです。
万が一漏れてしまった経血の洗濯方法
注意していても、ときには経血が服やシーツに付いてしまうということもありますよね。シミになる前に、汚れたら早めに汚れを落とすことがポイントです。また、洗濯の際にお湯を使うと、血液のタンパク質が固まり、血の汚れが落ちにくくなってしまいます。必ず水を使って洗うようにしましょう。
月経血コントロールについて
月経コントロールとは、膣を締めたり緩めたりすることで、経血の排泄にメリハリをつけることです。これはナプキンがまだ普及していない頃に着物で過ごしていた女性たちが実践していたもので、コントロールできるようになるとトイレで経血を排泄できるようになるそう。
月経コントロールの方法
①膣を締めて経血をためる
肛門をキュッと締めるイメージで膣を締めます。
②約1時間おきにトイレで経血を出す
1時間おきを目安にトイレで経血を出すようにしましょう。出すときは下腹部を意識し、ゆっくり息を吐きながら出しきるつもりでチャレンジしましょう。
3~4日で生理を終えられたり、生理中の不快なムレから解放されたりというメリットがある月経血コントロール。コントロールするにはトレーニングが必要ですが、マスターすれば生理が楽になるかもしれません。
生理中のデリケートゾーンケアについて
デリケートゾーンは皮膚が薄いため、かぶれやすい場所。生理中は経血によってムレるため、かゆみを感じる人も多いようです。かゆみを予防するには、こまめにナプキンを交換するのが大切。
なかなか時間が取れないという人は、タンポンや月経カップなどでムレを予防するのがいいでしょう。どうしてもかゆみを感じる場合は市販のデリケートゾーン用のかゆみ止めを使うか、婦人科を受診して薬を処方してもらいましょう。
生理は女性のデトックス期と考え、無理をせず、意識的に休養をとりながら快適に過ごしましょう。
<参照>
『脳も体もガラリと変わる! 「睡眠力」を上げる方法』白川修一郎(永岡書店)
『お医者さんにも読ませたい 「偏頭痛」を治す方法』後藤日出夫(健康ジャーナル社)
『頭痛治癒マニュアル』山王直子(本の泉社)
『頭痛薬をやめて頭痛を治そう!』陣内敬文(現代書林)
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