ヨガの呼吸法が、ストレス解消法として注目されています。ヨガではポーズをとりながら呼吸に意識を向けて整えることで、自律神経にアプローチできます。
「普段慌ただしく過ごしていると交感神経が上がりっぱなしの興奮状態に。リラックスに導く副交感神経のスイッチを入れてあげないとなかなか睡眠モードにならないんです」と話すのは、ヨガインストラクターの村上華子さん。
呼吸を意識したヨガを取り入れれば、自律神経が整い、副交感神経のスイッチが入りやすくなり、睡眠の質も自然と上がるのだそう。そこで今回は、快眠に効果的なヨガの呼吸法を教えてもらいました。
呼吸には「今の心の状態」がすべて表れる
そもそも「息」とは「自らの心」と書くように、その時の心の状態が表れるもの。落ち着いているときは呼吸もゆったりと整っていますが、怒っていると短くて荒い呼吸に、悲しいときは虫の息のようにか細い呼吸になります。
つまり自分が今、どんな呼吸をしているかによって、心の状態がわかると言えるでしょう。
「ヨガでは、心と身体はひとつながりと考えます。頭で思っていること、心で感じたことがそのまま身体に表れる。例えば『眠れない』という身体の反応も、頭の中のストレスが原因だったりします。ヨガでは様々なポーズをとり、呼吸を整えることで、身体と心を調整することができるんです」
呼吸のいいところは、心身が疲れている時などでも、思いたったらすぐに意識し、整えられること。
「私も会社員時代、社内が張り詰めた空気になって精神的にストレスを感じた時は、トイレに行って呼吸法を実践していました。それでスッキリしたら一気に仕事を片付ける、という感じでしたね(笑)。お金もかからず、気分転換したいときに手軽にできるのがすごくいいんです」
誰でも行いやすい「腹式呼吸」で心地よく眠る練習を
ヨガの呼吸法はいろいろありますが、寝る前でも簡単にできるのが「腹式呼吸」。
「おへその周りや脇腹に軽く触れて、吸うときにお腹がふくらみ、吐くときにへこむというイメージを持ちながら行いましょう。『息を吐く』ことはとても大事。余分な緊張を抜いたり、高ぶった気持ちを落ち着かせたりするのに有効です。腹圧をかけて、ふーっと吐き出していくといいですよ」
深い呼吸をすると、肋骨に付着している呼吸筋・横隔膜もしっかり動きます。横隔膜は自律神経とつながっていて、息を吐くときに副交感神経が優位になります。すると心身ともにリラックスし、ぐっすりと心地よく眠れるようになります。
「ただし、無理に呼吸を深めようとすると息苦しくなってしまうこともあります。『深い呼吸』より『気持ちいい呼吸』になるよう、ペースを調整しましょう。緊張しやすい人は鼻から息を吸って、口からハーッとため息のように吐き、慣れてきたら鼻呼吸に切り替えるのがおすすめです」
座って行うと体が緊張するという人は、仰向けで行うと体の余分な力を抜きやすくなります。そして、大切なのは「ながら」ではなく「集中して」行うこと。
「人は雑念が湧きやすいもの。お腹や脇腹など身体に触れることで『今』に集中しやすくする効果もあります。ながらで15分やるよりは、集中して3分行った方がよっぽど効果的です。せわしない環境にいる人は3分じっとしていることも苦痛で、のんびり穏やかに暮らしている人は時間が過ぎるのがあっという間。時間の感じ方も、心の状態を表しているんですよ」
呼吸を意識するのに最適なツール『2breathe(ツーブリーズ)』
センサー付きのベルトをお腹に巻くと、使用者の呼吸パターンを読み込みます。その後、アプリからリズム音が流れ、使用者の呼吸パターンに合わせた呼吸のペースをアプリがガイドしてくれます。
「お腹にベルトをつけるので、息を吸った時に膨らませる位置をちゃんと意識できるのがいいですね。『いい呼吸をしよう』と意識する習慣がつくと、日常のいろいろな場面で活用できると思います」と村上さん。
腹式呼吸をすることで全身に酸素がめぐり、血流もアップ。自然とリラックスした状態になり、いつの間にかすうっと眠りにつくことができそうです。
「寝る前に呼吸を整えることで、たった3時間しか眠れないという日でも眠りの質が格段に上がります。アプリのリズム音と呼吸がうまく同期できていると、翌朝の目覚めもスッキリするんです。
お金もかからず、いつでもどこでも好きなときに意識できる「呼吸」。上手に整えられるようになると、「ちょっとストレスが溜まってきたな」「緊張で眠れない」というときにも心身のリフレッシュに活用できます。日常生活での心のストレス解消にも、ぜひ役立ててみてください。
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