きめ細やかなヒアリングで、働く人の「眠れない」を解決
スリープ&ストレスクリニックは、2007年開業、睡眠障害を専門領域とする心と体のケアをするクリニックです。大崎駅から徒歩2分のオフィスビルに拠点を持つことで、働く人でも受診しやすい立地と環境にあり、「丁寧に向き合う診療」をモットーとしています。日々どんな診療を行っているのか、林田健一院長に伺いました。
忙しい人でも通いやすい立地で、働く人の「眠り」をケア
――林田先生が医師を目指したきっかけを教えてください。
「もともと両方の祖父が医師で、親戚関係も医師が多いという環境で育ったことと、人と関わることが好きなので、高校生ぐらいの頃から自然と医師を目指すようになりました。医学部に入る前から、研究ではなく臨床医になりたいと思っていました。そして特定の臓器を見ることよりも、そのひとが精神的に豊かになるような診療がしたいと思い、精神科を選びました」
――スリープ&ストレスクリニックでは、睡眠という観点でストレスケアなどを行っているそうですが、現代において眠りに悩む方はどれくらいいるのでしょうか。
「当クリニックの診療科目である、睡眠外来、精神科、心療内科のうち、睡眠外来はどちらかというと珍しい領域なのですが、精神科を受診されるほぼすべての患者さんが不眠に悩んでいます。また、20年以上前は、眠気は別に病気ではないと思われていましたが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)という、眠気を起こす病気が知られるようになってから、「眠気にも病気が隠れている」というイメージに変わったのではないかと思います。“眠れない”だけではなく、 “(寝ているはずなのに)眠い”と感じることは、日中のパフォーマンスにも影響が出てしまうものなんです」
――朝なかなか起きられなかったり、午後にどうしても眠くなったりと、睡眠に関連した悩みを持った人は確かに多そうです。
「重度の睡眠障害を持ったまま生活をしていると、社会的な面で必要となる機能が低下することもあります。特に私は働いている人たちをサポートすることに一番関心があったので、そのためには睡眠領域がアプローチしやすいだろうと思ったんです。睡眠はすべての人に関わるもの。眠れる、眠れない、睡眠時間、眠っているときの状態から、その人の抱えている問題が分かりますから」
――大崎のオフィスビルにスリープ&ストレスクリニックを開業された理由は?
「もともと大学病院の精神科で外来を診ていたのですが、当時は睡眠時無呼吸症候群(SAS)を診るのは呼吸器科や耳鼻科でした。ただ、睡眠時無呼吸症候群で不眠の人となると、さまざまな科目を受診しなければならないことが多かったんです。このような状況を目の当たりにして、できるだけ1カ所で包括的に診察できるようにしたいと思うようになりました。例えば、“睡眠不足なのか、もしくはSASが原因なのか”“SASだけでなくうつ病の可能性もあるのか”“うつ病に見えてSASだったのか”などの判別や合併症を一カ所で診たいと思い、2007年にこのスリープ&ストレスクリニックを開業しました。働く人のメンタルと、それに関する睡眠をサポートすることが目的ですので、患者さんが来やすいようにと、クリニックの場所はオフィスビルが多いエリアにしました」
まずはヒアリングで「眠れない原因」を一緒に整理
――主にこちらに来られる患者さんは、どんな睡眠の悩みを持った方が多いのでしょうか。
「働き盛りで、寝たいのになかなか寝付けないといういわゆる不眠症の方は多いですね。また、寝不足による眠気や、日々の睡眠不足が負債のように積み重なって、心身に悪影響を及ぼす“睡眠負債”の問題。眠気によって日常生活のパフォーマンスが落ちていることに気付かず、まわりから注意されて初めてクリニックを訪れる方が多いですね。あとはメタボリックシンドロームによる睡眠時無呼吸症候群、24時間化社会でシフトワークによる“社会的時差ぼけ”に悩まされている人などもいます。働いている方は、これらの問題を抱えている方が多いと感じますね。こうした関東近郊で働き、不眠症状が出ている方のほかにも、レアケースの睡眠障害を抱えた方や、睡眠医療がない地域の方などは遠方からも足を運んでいただいています」
――眠れない原因が自分でも分からないという方もいらっしゃいますか。
「いらっしゃいますね。寝不足は、正式には睡眠不足症候群といいますが、患者さんご自身は自分が寝不足と気づいていないことがほとんどです。“睡眠時間は人並みにある”“平日は眠れていないけれど週末にたっぷり寝ているから大丈夫だ”と思っています。ですが、その人にとっての睡眠量が不足していれば、睡眠不足症候群ということになります。“仕事やプライベートを優先するあまり睡眠が短くなっている”“何も予定がない休日だけ睡眠が長い”“休日も忙しくて、もうずっと睡眠が短い”“昼間に眠くなって社会的生活に支障が出ている”という状況の方は、危ないと思ってください。こういう方たちには、睡眠をきちんと取らないと心身に影響が出ること、睡眠時間には個人差があることをお伝えして、しっかり睡眠を取る生活スタイルに導くようにしています。それでも改善しなければ、睡眠検査で評価をすることになります」
――こちらに初めて来た患者さんは、まずどのような診察をされるのでしょうか?
「初診の方はまずインタビューを行います。睡眠時無呼吸症候群の方などはもう状況が分かっているので早いですが、精神的な要因の可能性が高い場合は、初診の方は30分以上お話しています」
――じっくり話をすることで、患者さんご自身でも気づかない生活パターンの穴が見つかることもあるのでしょうか?
「そうですね。本人の症状だけでなく、いろいろな方向でお話を聞いてきます。例えば、職場の環境や家庭内の状況などの背景なども伺います。また、場合によってはその人の性格的な特徴を見極めることもあります。人によって状況はさまざまです。今は子育て、介護、受験勉強などいろんな理由で寝られない人がたくさんいます。日中元気に過ごせていれば問題ないのですが、最近眠れていないとか、日中調子が悪いと感じている患者さんには、睡眠から見直したほうが良いとお伝えしています」
――診療するうえで林田先生が重視されていることは何でしょうか?
「その人が何に悩んでいて、何を治したいのかを聞くようにしています。原因がわからないときは、一緒にそれを整理する。例えば“朝起きられない”というだけでもいろんな要素があります。寝不足なのか、不眠症なのか、睡眠時無呼吸症候群なのか、会社に行きたくないなど精神的なものなのか、うつ病に近い状態なのか。これだけの要素があるので、まずは睡眠の問題なのか、メンタルの問題なのか、ストレスかを一つずつ整理していくようにしていますね」
遠隔診療で、より多くの人に、より細かな診療を
――このクリニックで早くから取り入れている診療方法である、遠隔診療についてお聞かせください。
「トライアルではありますが、10年ほど前から行っているものです。川崎市にある太田睡眠科学センターと提携しての診療になります。太田睡眠科学センターは耳鼻科がメインの総合型睡眠センターで、耳鼻科医と患者さんがいて、テレビカメラを通じて私たちも同時に診るというものです。ドクター二人と患者さん一人の“テレコンサルテーション”ですね」
――どのようなメリットがあるのでしょうか。
「例えば、睡眠時無呼吸症候群でCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)を行っている方で、無呼吸の症状は消えたけれど、まだ眠いと感じている場合、他の眠気の原因を探ることができます。または、CPAPのデバイスをつけたら眠りにくくなってしまった患者さんに、不眠の治療のコントロールをすることなどもできます。遠隔で医師と患者さんと治療の方向性を決めて、その後、状況によってはこちらに来てもらって対面診療に切り替えることもありますね。医療機関同士が遠隔診療を用いて連携する“診診連携”には、まだ保険適用されていないので、今後エビデンスが集積され、保険収載されることで、医療費削減につながればと思っています」
――遠方で受診に二の足を踏んでいる方にも良いですね。
「睡眠医療を受診できる場所は、東京や名古屋、大阪など都市にはあるのですが、ちょっと場所がずれるとまだまだ足りないのが現状です。睡眠医療は過疎状態というところがほとんどで、地域に偏りがあるんです。近くに専門医がいない患者さんを救ってあげたいですよね」
――9月には、東京・鮫洲に新しく診療所をオープンさせるそうですね。こちらはどのような場所になるのでしょうか。
「睡眠ポリグラフ検査ができる有床のクリニックになります。夜の睡眠中の検査には、無呼吸、心電図、筋電図を診断することが必要なのですが、これまでは睡眠総合ケアクリニック代々木との診診連携で検査を外注していました。鮫洲の新しいクリニックでは、それらの検査ができるようになります。自分たちで検査も行うことで、より専門性を高めていきたいと思っており、そのための入院施設も準備しているところです」
――睡眠障害がより細かく分かるようになるんですね。
「睡眠時無呼吸症候群の検査・診断には睡眠ポリグラフ検査が必要不可欠です。通常は問診で、眠れたか眠れないか、何時間ぐらい寝たかをヒアリングするのですが、それを客観的に評価するのがこの検査です。睡眠の量、質、リズムを客観的に見ることができるようになります」
――睡眠について気になることがある方に、アドバイスをいただけますでしょうか。
「私たちは、寝るために生きているわけではありません。睡眠は、イキイキと、楽しく、クリエーティブに活動するための充電時間。心と体をちゃんとリフレッシュできないと、日常生活とつじつまが合わなくなってしまいます。最近ちょっと不調だなと感じたら、眠りの優先順位を上げることを意識してみてください。まずは自分の睡眠を見直してみましょう」
クリニック基本情報
日常のパフォーマンスを上げるための睡眠をサポート
「スリープ&ストレスクリニック」は、JR大崎駅新西口からペデストリアンデッキを経由し徒歩2分のThink Tower3階にある睡眠とメンタル専門のクリニックだ。診療内容は、睡眠外来、心療内科、精神科。院長の林田健一氏は、1996年、慈恵医科大学卒業後、同大学精神医学局に入局。慈恵医大本院、慈恵医大青戸病院に勤務し、外来患者の診療を経て、2007年、大崎の現在地にスリープ&ストレスクリニックを開業した。日本睡眠学会評議員・認定医、精神保健指定医、日本医師会認定産業医の資格を持ち、睡眠の視点からストレスや心身のケアを行っている。2018年9月、東京・鮫洲に検査入院施設を備えた診療所「スリープ・サポート クリニック」を開設。
クリニックの電話番号│03-5745-3080
診療時間
クリニックの様子
<スリープ&ストレスクリニック>
大崎駅に隣接するオフィスビル内のクリニックフロアにある、睡眠専門クリニック
白を基調とした清潔感のある待合室
リラックスして医師とコミニュケーションができる診察室
遠隔診療のためのテレビカメラ(写真奥)が設置された診察室
CPAP療法の際に機材の使い方などを患者さんに説明するための部屋
患者さんに使い方を説明するためのCPAP装置
林田健一院長とクリニックスタッフ
<スリープ・サポート クリニック>
2018年9月、東京・鮫洲に開院した「スリープ・サポート クリニック」。スリープ&ストレスクリニックの分院にあたり、こちらでは、宿泊での検査入院が可能。
診療・治療を中心とした大崎の本院とは異なり、スリープ・サポート クリニックは宿泊での検査入院が可能なクリニックのため、ブラウンを基調とした落ち着いた院内。
モニター室では、患者さんの検査状況をスタッフが随時確認することが可能。
検査ルームは、患者さんの希望に応じて、3タイプのグレードから選ぶことができる。最も大きな検査ルームは、シモンズのセミダブルベットが採用されているほか、マッサージチェアも完備。
最も大きな検査ルームのシャワー室と、洗面台。「患者さんに少しでも寛いでもらえればと思い、ホテルのような内装を意識しました」(林田先生)とのこと。