眠れない、強い憂鬱(ゆううつ)感、意欲の低下、身体がだるいなどの症状が続き、「自分はうつ病かも」と思っていても確信が持てず病院に行きづらい…。
また、うつ病の症状を詳しく知らないため、自分がうつ病なのではないかと思っていても確信が持てない…。
そんな方のために今回は六番町メンタルクリニック所長で精神科医の野村総一郎先生に、うつ病の症状、簡易自己診断法、対処法を伺いました。
うつ病は過度のストレスがきっかけで発症すると考えられている病気で、心と身体にさまざまな症状が現れます。
うつ病は適切に対処しなければ重症化することもあるため、早期の発見、治療が大切です。まずは正しくうつ病を理解するためにうつ病の具体的な症状を紹介します。
特徴的な症状に、強い憂鬱感があります。全ての物事に対する意欲が低下し、楽しさや悲しさなどの感情が湧かなくなります。
不眠または過眠の傾向があり、判断力がなくなり、悲観的な考え方から抜け出せず、自己否定を繰り返してしまいます。
疲労感、倦怠感、頭痛、手足のしびれ、悪寒、発汗、めまい、口の乾き、肩こり、吐き気などの症状があります。
うつ病ではこれらの症状が2週間の間に1日中、ほとんど毎日のように続くことがあります。
これまで紹介したような症状があり、自分がうつ病かもしれないと感じたら、下記のチェックシートで確認してみましょう。
チェックシートは、うつ症状の進行具合を示すもので、当てはまる項目が多いほど、うつの程度が重いということになります。
ただし、チェックシートはあくまで目安です。 チェックシートの結果でうつ症状の進行度が低いと出ても、気になる場合は専門医の診断を受けて下さい。
次のうち、当てはまるものがあればチェックしてください。
【診断】 ①~⑨の症状のうち、5つ以上が当てはまり(ただし、①と②のどちらか一つは必須)、それらの症状が2週間以上続いて、苦痛を感じている。あるいは生活に支障をきたしている場合、うつ病の可能性があります。
出典:うつ病 正しく知って治す (別冊NHKきょうの健康 著者:野村総一朗)
うつ病は症状が似ている病気が複数あるため、非常に診断が難しい病気です。
下記で紹介する病気の可能性も視野に入れ、症状が重症化しているならすぐに専門医の診断を受けましょう。
以前は「躁うつ病」と呼ばれていた病気で、過剰に活動的になったり怒りっぽくなったりする躁状態と、うつ状態が交互に現れる病気です。
躁状態のときには気分が異様に高揚し、怒りっぽくなったり、自信過剰になって支離滅裂な言動をするなど、うつ状態とは対極の症状が現れます。
例えば、長い間うつ病だと思われていた人が、60歳になって初めて躁が出て、実は双極性障害だったと判明するようなケースもあります。
軽度のうつ状態が慢性的に続く病気です。
うつ病と同じように憂鬱状態が続き、疲れやすく集中力、思考力、判断力なども低下します。「新型うつ病」などと呼ばれることもあります。
月経の7〜10日前に一時的に腹痛、頭痛、苛立つ、抑うつ感などの症状が現れます。
同じように月経前に身体、精神に症状が現れる月経前症候群(PMS)よりも精神的な症状が重いのが特徴です。
うつ病は軽度か重度かによってそれぞれ対処法が異なります。ここでは軽度と重度の場合、それぞれの対処法やうつ病の方に対する周囲の接し方を紹介します。
うつ病が軽度の場合、ストレスを溜めないこと、溜まってしまっているストレスを解消することが対処法になります。
専門医に診断してもらうことが一番の対処法ですが、下記の方法を参考に、ストレスをためない生活を心がけましょう。
うつ病はストレスによって発症すると考えられるため、原因となるストレスをこまめに解消するため休息をとることが重要です。
また、積極的なストレス解消のためには自分の趣味やリフレッシュする時間を増やすと良いでしょう。
軽い運動も、ストレスを解消するため軽症のうつ病には効果的といわれています。例えば散歩や、ウォーキング、ラジオ体操などがおすすめです。
十分な休息をとり、ストレスを軽減させてもうつ状態が改善しない場合は、心療内科や精神科を受診してください。
病院では投薬治療や認知行動療法など、より専門的な治療を受けることができます。
学校や仕事を休んで休養・治療することが必要なときには医師が診断書を発行します。 専門医とよく相談の上、治療を進めていきましょう。
家族や同僚などの親しい人がうつ病になってしまったときには、周囲のサポートが必要です。ここでは周囲の人が行えるサポート方法をご紹介します。
うつ病の症状が出ていても病院へ行きたがらない人もいます。
このとき、周囲の人たちは、うつ病の人に、なぜ病院へ行きたくないのかを聞いてあげるといいでしょう。
まず家族だけで受診して、医師に相談することもできます。
まずは周りの人がカウンセリングマインドをもって話を聞いてあげることが、助けになります。とにかく相手の話を聞いて、受け止めることを心がけましょう。
また、休養や軽い運動を勧めるのもいいでしょう。
うつ病の人の80%は何らかの睡眠障害を持っています。特に不眠は、うつ病のなかでも主な症状で、多くのうつ病の方を苦しめています。
初期であれば、睡眠導入剤が有効です。
ただし、睡眠導入剤には習慣性や依存性があるため、睡眠導入剤を使っても長期間にわたって改善しない場合には、漫然と使い続けるべきではありません。
ほかの治療が必要になります。
薬のほかには、規則正しい生活や適度な運動など、一般的な不眠対策が効果的です。
ここでは厚生労働省が作成した「健康づくりのための睡眠指針~睡眠12箇条~」を紹介します。
出典:厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針~睡眠12箇条~
規則正しい生活や適度な運動はうつ病の対策となるだけでなく、予防にもなります。適切な休息を取りましょう。
<参照>
・「新版 うつ病をなおす」野村総一郎(講談社現代新書)
・平成26年(2014)患者調査の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/index.html
・厚生労働省 精神疾患による患者数
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html
・厚生労働省 自殺・うつ病等対策プロジェクトチームとりまとめについて
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2010/07/03.html
・厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針~睡眠12箇条~
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
photo:Getty Images
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