睡眠中に空気の通り道である上気道で発生する振動音が「いびき」です。上気道が何らかの原因で狭くなると、呼吸をしたときに口蓋垂(こうがいすい)や軟口蓋(なんこうがい)などが空気との摩擦によって振動することでいびき音が生じます。
いびきの音は、大きさや高さ、間隔などに個人差があります。いびき自体が日中の眠気や不眠症状を引き起こすことはありません。しかし、いびきによって、口やのどが渇いたり、刺激されたりする感覚が生じることがあります。結果として、質の良い睡眠を得にくい状態になります。一緒に寝ている人の睡眠を妨げたり、本人がその音で目を覚ましてしまったりすることもあります。
いびきは、疲労や鼻づまり(鼻閉)、風邪などが原因になるほか、上気道の筋緊張を弱める飲酒、筋弛緩薬、麻酔薬などによって引き起こされ、喫煙が危険因子であることも確認されています。
男女問わず、あらゆる年齢層に見られる症状ですが、加齢や肥満度指数(BMI)の増加とともに、発生しやすくなることがわかっています。
いつもはいびきをかかないのに飲酒したときだけ、またはアレルギー性鼻炎の鼻づまりにともなっていびきをかくような一時的な場合はそれほど心配ありません。単純性いびきは、その原因を取り除けばいびき症状も改善します。
ただし、毎日いびきをかく場合には注意が必要です。いびきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表的な症状のひとつです。毎日いびきをかき、寝ている間に呼吸が止まったり、苦しそうな呼吸がみられたりする場合にはこの病気を疑う必要があります。睡眠時無呼吸をともなういびきの場合には、専門医への早めの相談が肝心です。
その他、耳鼻科的な病気が潜んでいる場合もあります。子どもでは扁桃肥大やアデノイド増殖症、大人では副鼻腔炎や鼻中隔弯曲症(鼻の左右の仕切りが曲がった状態)など、いずれも耳鼻科的な治療によっていびき症状を軽減することができますが、放っておくとさらにいびきを悪化させ、SASの原因にもなることがあるので注意が必要です。
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上気道を広く保つ工夫がいびき対策につながります。仰向けで寝るよりも横向きで寝たほうが気道は広く保てます。抱き枕を使うと横向きでも寝姿勢が安定しやすくなります。
その他、さまざまないびき対策グッズが市販されていますが、大切なのはいびきの原因やそこに潜む他の病気のリスクを見極めることです。あくまで補助的に使用することをおすすめします。
参考図書:
「睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)」(医学書院)発行:日本睡眠学会
監修
医師・医学博士
塩見 利明
愛知医科大学 睡眠科 教授
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