睡眠学研究レポート

新事実!睡眠時無呼吸症候群と緑内障の深い関係

眠っているときに呼吸が止まってしまう睡眠障害「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」

日本国内でも自覚していない人を含めれば300万人以上もの患者がいるとされていますが、この睡眠時無呼吸症候群に関するある意外なデータが存在します。それが、「睡眠時無呼吸症候群の患者では、緑内障を患うリスクが正常な人の約10倍高い」という事実。

しかし、そのメカニズムはこれまで明らかにされていませんでした。

そんな中2016年6月に、北海道大学大学院 医学研究科の新明康弘助教たちの研究グループが、「睡眠時無呼吸症候群」と「緑内障」の関係を解明する研究論文を米国科学誌に発表したのです。さっそく新明康弘助教にお話を伺いました。

 

コンタクトレンズ型眼圧計が明らかにした、睡眠時無呼吸症候群と緑内障の関係

睡眠時無呼吸症候群は寝ている時に起こるため、本人もなかなか病状に気がつかず、発見や治療が遅れてしまうことが問題の一つ。

 

「気づかない程度なら、特に問題ないのでは?」と考えてしまいがちですが、実は、睡眠時無呼吸症候群は身体に大きな負担をかけています。

例えば、高血圧、糖尿病、心筋梗塞などの引き金になることが報告されており、これまで睡眠時無呼吸症候群が心血管系におよぼす危険性について注目が集まってきました。

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それに加えて注目したいのが、失明の恐れもある「緑内障」と睡眠時無呼吸症候群の関係。睡眠時無呼吸症候群の患者が「緑内障」を発症する率は、正常な人の約10倍も多いというデータが明らかになっています。しかし、「睡眠時無呼吸症候群の患者がなぜ緑内障になりやすいのか」については、これまで解明されていませんでした

 

有力な説として考えられていたのは、「眼圧が高くなることで視神経が圧迫され、ダメージを受けて緑内障を発症する」という説。ただ、睡眠中の眼圧を継続的に測定することはほぼ不可能。これまでは数時間おきに患者を起こした状態で測定するしか方法がありませんでした。

 

そんな中、いままで使用ができなかった「コンタクトレンズ型眼圧計」の使用認可が下りたのです。これによって、患者の睡眠を妨げることなく、睡眠中の眼圧を継続的に調べることができるようになりました。新明助教のグループは「睡眠時無呼吸症候群の患者は、寝ているときに息が止まることで眼圧が上昇しているのではないか」との仮説を立て、その調査を実施しました。

 

睡眠時無呼吸症候群の患者に対して、睡眠中に5分ごと30秒間の眼圧を測定。他にも、脳波、呼吸、心電図、節電図、いびき、酸素飽和度を測定しました。「私たちの立てた仮説では、『息を止めたときに胸腔内の圧力が上がるため、眼圧も上昇する』と考えていました。

 

ところが実際には、無呼吸発作時には気道閉塞により息が吸い込めなくなるため、胸腔内圧はむしろ下がり、眼圧も下がっていることが判明したのです。睡眠時無呼吸症候群の患者が緑内障を引き起こす原因が『眼圧の高さ』ではないことが明らかになりました」(新明助教)

 

では、睡眠時無呼吸症候群の患者に緑内障が多い理由は、現在もわからないままなのでしょうか。「今回の調査の結果を経て、有力な説と考えられるようになったのは、『無呼吸発作は眼圧と同時に血中酸素飽和度も下げるため、低酸素状態になり、緑内障発症に影響している』ということです」と、新明助教。

睡眠時無呼吸症候群が引き起こす血中の低酸素状態は、さまざまな悪影響が

睡眠時無呼吸症候群による低酸素状態がさまざまな疾患を引き起こすことは、これまでもご紹介してきました。

今回の実験は、緑内障も同じく睡眠時無呼吸症候群による低酸素状態によって引き起こされる可能性が高い、ということを示唆するものでした。「血中酸素飽和度が瞬間的にでも20%以上低下すると、脳梗塞の危険性が高まると言われています。酸素が足りなければ、脳の神経や血管に障害が起こりやすくなるのは当然のことと言えます。

 

視神経も脳の一部といえるので、やはり低酸素状態では障害が起きている可能性があります」(新明助教)

 

日本人の失明原因第一位と言われている「緑内障」。国内の推定患者数は約400万人、年齢とともに発症するリスクが高くなり、40歳以上の20人に1人が発症しているとされています。

視覚障害が起きてから検査しても、一度欠損した視野は回復しないことが多いため、健康診断などで定期的に眼科医の検査を受けておきたいもの。さらに、今回ご紹介したように、睡眠時無呼吸症候群に対するケアも大切です。

 

「ときどき眠りが浅いだけだから…」「いびきが大きいけど仕方がない」などと安易に考えず、少しでも心当たりがあれば専門機関で検査を受けましょう。

photo:Thinkstock / Getty Images

※記事は旧フミナーズから移動しました。

監修
医師・医学博士

新明 康弘

北海道大学 大学院医学研究院 眼科学教室 診療講師(外来医長)

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