仕事が忙しくなったり人間関係で悩んだりしているときに、眠いと感じたことはありませんか?その眠気の原因はストレスかもしれません。今回は、ストレスと眠気の関係や、ストレスによる日中の眠気の対処法を紹介します。
日中眠くなる要因はさまざまあり、そのひとつに「ストレス」があげられます。まずはストレスが何かを解説し、眠気とストレスの関係について解説します。
「ストレス」とは、「ストレッサー」という外部からの刺激によって心身に「ストレス反応」が出ている状態を指します。
「ストレッサー」には、大きく分けて5つの種類があります。
(1)物理的ストレッサー太陽光による紫外線、工事現場で発生する騒音、冷暖房により身体が感じる寒暖差などの環境的刺激
(2)化学的ストレッサー飲酒によるアルコールの摂取や喫煙によるニコチンの吸収で受ける刺激
(3)生物学的ストレッサーウイルスや病原菌が体内へ侵入したことによる刺激
(4)社会的ストレッサー情報過多の過密生活、家庭環境、職場での人間関係
(5)精神的ストレッサー対人関係で生じる不安やイライラ、悲しみ、仕事に対する緊張や焦り
ストレス反応とは、ストレッサーに対して身体面、精神面に現れる反応のこと。ストレッサーに接触すると、ストレスホルモンの一種「アドレナリン」や「コルチゾール」が分泌され、循環器や消化器、呼吸器などの活動を調整する自律神経のひとつである「交感神経」が緊張状態になります。
ストレス反応は身体面と精神面、両方に現れます。前述した精神的ストレッサー「不安、怒り、緊張、焦り」という心身の変化自体が作用し、ストレス反応として同様の症状が現れるという仕組みになっています。
身体に現れるストレス反応
→「眠れない」の症状を正しく把握し、適切な対応をするための方法を紹介します。
ストレスがたまると、脳から「コルチコトロピン(CRH)」という睡眠を抑制する作用があるホルモンが分泌されます。すると、寝付きが悪くなったり、夜中に目が覚めたりして睡眠不足の状態になります。
睡眠不足が続くと、本来睡眠によって解消されるはずの疲労物質(睡眠物質)が脳に蓄積し、常に睡眠を促すようになります。これによって、日中に強い眠気を感じるのです。
前述したストレス要因となる「ストレッサー」が身の回りにないにもかかわらず、日中の眠気に悩んでいる場合は、以下の睡眠の病気の可能性があります。
下記の記事内にセルフチェックリストがあるので、参照のうえ、可能性がある場合は早めに専門医を受診しましょう。
→放置していると重大な病気や命の危険にまでつながる恐れがある病気の対処法を紹介します。
日中眠ってはいけないときに強い睡魔に襲われてしまった場合、一時的に対処する方法を紹介します。
椅子に深く腰掛け、1分間目を閉じましょう。目を閉じることによって、脳に入ってくる情報を遮断し、脳を休ませることで、疲労回復になり眠気がとれます。
ガムをかむと、あごの筋肉の収縮と弛緩が周期的に繰り返され、一定のリズム運動となり、神経細胞が活発になって脳や身体が目覚めます。
強い光には睡眠ホルモンの「メラトニン」を減少させ、眠気を和らげる効果があります。
背筋を伸ばすことで体温が上がり、活発に動けるようになります。
背中には長時間安定的にエネルギーを発生させる遅筋(ちきん)が集まっているため、体温が上がり、全身が「活動モード」になり眠気がとれます。
耳には100以上のツボがあるといわれており、特に耳たぶのツボは軽くもむと身体が温まり、眠気がとれやすくなります。
両手で左右の耳たぶを持ち、下にゆっくり3秒引っ張ったらポンと放す動作を、4〜5回繰り返しましょう。仕上げに耳全体をもんだり、上下・左右・斜め方向に引っぱったりすることで、耳全体のツボが刺激され、より効果的です。
コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインは、脳にたまった睡眠物質の働きをブロックして、眠気を払う作用があります。
交感神経が活発になりストレスがたまった状態だと、寝つきが悪く、睡眠の質が低くなっている可能性があります。ここでは寝つきをよくし、睡眠の質を高めることで日中の眠気を予防する方法を紹介します。
眠る前に筋肉に力を入れて交感神経を活発にしたあと、力を一気にゆるめることで、副交感神経を優位にする方法。力を入れたり抜いたりすることを繰り返すことにより、身体の力を抜く感覚がつかめます。
<全身の緊張をほぐす筋弛緩トレーニング法>
就寝時に胃の中に食べ物が残っていると、胃腸に負担がかかり、眠りが浅くなってしまいます。消化にかかる時間を考慮し、就寝3時間前までに食べ終えておくようにしましょう。
寝る1時間ほど前までに、20〜30分間、39〜40度のぬるめのお湯をはった湯船につかりましょう。すると、身体の内部の温度(深部体温)がいったん上がり、入浴後、深部体温が下がるときに自然な眠気を感じやすくなります。全身の筋肉を弛緩し、副交感神経が優位に働きやすくなります。
ストレスによる日中の眠気を解消するためには、眠気の原因となるストレス反応を軽減させることが重要です。ここでは、ストレス反応を軽減させる方法を紹介します。
精神的ストレッサーによるストレス反応を軽減させるためには、自律神経を整える呼吸法が有効です。ストレスがたまった状態だと、呼吸が浅くなり、交感神経がより緊張しやすくなっています。
そこで、副交感神経を優位にする「呼吸法」を試しましょう。リラックスした気分になり、イライラが軽減されます。
精神状態を安定させる脳の神経伝達物質「セロトニン」の分泌を促しましょう。階段の上り下りや散歩などの「筋肉を規則的かつ継続的に動かす運動」や、背中や太もも、ふくらはぎなどの筋肉を鍛えるヨガやストレッチをすると、脳に刺激が加わり、セロトニンの分泌が促進されます。
運動をする時間がないときでも、以下の方法でセロトニンの分泌を促すことができます。
セロトニンは、同じく神経伝達物質として作用する「トリプトファン」や「ビタミンB6」から生成されます。トリプトファンは、牛乳やヨーグルトなどの乳製品、豆腐や納豆などの大豆製品から、ビタミンB6は刺身や焼き魚などの魚料理から多く摂取できます。
食事だけでセロトニンを補いえきれない場合は、サプリメントを活用してみましょう。セロトニンの生成を促す代表的なサプリメントは、天然ハーブの一種「セントジョーンズワート」です。
セロトニンの分泌には、朝に太陽の光を浴びることも効果的です。朝セロトニンが分泌されると、夜になると睡眠ホルモン「メラトニン」が十分に生成されるため、入眠もスムーズになります。
<参照>
『対人関係のイライラは医学的に9割解消できる』松村浩道(マイナビ新書)
『驚くほど睡眠の質がよくなる 睡眠メソッド100』三橋美穂(かんき出版)
『脳も体もガラリと変わる睡眠力を上げる方法』白川修一郎(永岡書店)
Fujimoto Medical System
タケダ健康サイト
photo:Getty Images
監修
精神科・心療内科・皮膚科
井上 智介
Sleep Stylesは、睡眠に悩む全てのビジネスパーソンへ向けて、睡眠をテーマとした睡眠学研究レポートを公開しています。よりよい睡眠で日中のパフォーマンスを上げたい方々に向け、良い睡眠習慣への改善を総合的にサポートしてまいります。
こんにちは。睡眠コンサルタントの土井です。 連載の第9回目となります。私は幼い頃から不眠に苦しみ、約20年もの…
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